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【怖い話】叔父の研究資料とは…?

【怖い話】叔父の研究資料とは…? 
349: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:45
根岸さんという青年は、最近、京都にあるおじの家の二階から飛び出した。
これは、たとえで言っているのではなくて、本当に根岸さんはその家の二階の
窓から飛び降りて、その後、痛む足を引きずりながら市内の友人の下宿に転がり
こんだのである。



どうしてまた、彼はそんな危険な真似をしなければならなかったのか? 
それは以下の通りである。 
ある日、親しく話す機会さえなかったおじが、突然電話をかけてきた。 
なんでも、大学で教授をしているそのおじが、突然海外にフィールドワーク 
で出かけることになり、その間の家の管理を頼みたい、ということであった。 
独身のおじの家には、たいして金目のものがあるわけではないが、研究用の 
資料が心配だと言うのである。 
現在東京に住む根岸さんは、京都の大学を出てから久しく訪れていない。 
会ってみたい友人もいるし、滞在費がロハで、その上わずかながらギャラも 
出るというので、根岸さんは引き受けた。 
期間は未定だが、半年ほどかかる可能性もあるとのことだ。 
おじは出かける前、根岸さんにしつこいくらいにこう言った。 

「二階には、未整理の研究資料が散乱していてな。まあ、いってみれば 
二階全部がわしの書庫みたいなものだ。わしにとっては命より大切なもの 
なんだ。他人にはいじられたくない。たとえ、それが身内であってもな。 
二階は足を踏み入れられるだけでも耐えられんのだ。頼むぞ。冗談で言ってるん 
じゃないんだ。」そういって、おじは根岸さんを睨みつけたという。 

そして、初日の夜。 
ビデオもテレビもない家だが、根岸さんはソファーでくつろぎ、満ち足りた気分 
でいた。

350: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:45
が、その満ち足りた気持ちに水をさすものがあった。 

・・・・・話し声が、聞こえる。 

ぼそぼそ、ヒソヒソと、誰かがそう遠くないところで会話しているのだ
--押し殺した声で。 
声はどうやら、階段を伝わってくるようだ。
つまり---雨戸も締め切られ、真っ暗な二階から。 
 
「ほんとかよ・・・おい?」 
 
根岸さんは、わざと軽薄な口調でつぶやいた。 
そして体を起こすと、階段を見上げた。 
つけっぱなしの照明も階段の途中までしか届いてはいない。 
根岸さんは、耳をすましてみる。 
何も聞こえない。今は、何も。 

京都に来て、一週間後。根岸さんは、
当初の満ち足りた気分が徐々にしぼんでいくのを感じた。 
旧友にあって馬鹿騒ぎをし、趣味の分野のショップをはしごするのは、
なるほど楽しかった。 

問題は家だ。 

宿がわりになっている、そして留守番を引き受けてもいるおじの家なのだ。 
最初の数日は、それでもどうということはなかった。だが----。 
夜ごと---いや、どうかすると昼間でも、二階から階段を伝わってくるのだ。 

………………人の声が。

351: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:46
もはや、耳のせいでは片付けられなかった。 
二人、あるいはそれ以上の人間が、ぼそりぼそりとしきりに何かを話している。 
ザワザワ、ゾワゾワと多人数がしゃべっている、繁華街の雑踏の中で耳にする 
ような音が聞こえてくることもあった。 

人声だけでは、ない。 

ずるりずるりと足を引きずるみたいな音。 
あるいはぴょこたん、ぴょこたんと子供くらいの重さのものが、跳びはねている 
のではないかと思われる物音が、聞こえたりもした。 
肝心の階段の下に行って上をうかがっても、何の気配もない。 
その時にかぎって寂として、耳が痛いくらいだ。 
だが、他の部屋に行くと、やがてそれは始まる。 
過敏になってしかたのない神経を何とか休ませようとする、
まさにその時にそれは始まるのだ。 
風呂に入っているとき。ソファーで本を読んでいるとき。
あるいはこれから寝付こうとするとき。
 そしてある夕暮れ時、根岸さんはついに、二階に上がることを決意し、
大型の懐中電灯を購入した。 

(これなら、力まかせに殴れば、大の男でも殴り倒せるな・・・) 

根岸さんは、天井を見上げた。 
それから彼は、階段をのぼり始めた。 

ぎし、ぎし、ぎし、ぎし、ぎし、…………………ギシッ! 

手すりのところまでのぼると、そこからまず首をのばし、二階の廊下を見た。 
外はまだ明るいというのに、真っ暗だ。 
誰かが、顔の前で白い手の平を、ひらひらと振っても気が付かずにいるに違いない。 
二階には、カギ状に折れ曲がった廊下と、その先の部屋しかないようだ。 
拾い廊下は左右に本が乱雑に積まれ、天井に届くほどのその柱が、ずっと続いている。 
資料が散乱しているというおじの言葉は、この点で正しかった。

352: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:47
根岸さんは注意深く光を左右に向けた。とくに不審なものは、見当たらない。 
床に厚く埃の層がたまっている。 
ここに人が立ち入った形跡はない。 

(でも、書庫--なんだろ?おじは出入りしていたはずだが・・それとも?) 

角を曲がった廊下の突き当たりには、扉をはずされた部屋があった。 
やはり廊下同様ひどい埃だ。 

(あの物音は、ここでしていたはずなんだ。二階には他の部屋なんてないんだからな。 
廊下をのぞけば、他に部屋は一つも・・・) 

だが、人が入った形跡すらない。 
それでは、あの意味不明の会話は、どこから聞こえてきたというのだろう。 
気負っていただけに、気持ちの張りが、ふにゃふにゃになってしまいそうだった。 
-----と。根岸さんは、いきなり耳の中でカーンという鋭い音が聞こえたような 
気がした。 
それは、五感で感じ取れるものなどではなかった。 
チリチリと、ジワジワと、とてつもなく嫌な気配がする。 
姿も何もない切迫感に似たものが、冷たく頭の後ろにはりついて、順番に髪の毛 
を一本一本逆立たせてゆくのだ………。 
 
「何だって、いうんだ、よ」 
 
根岸さんは、意識して大きな声でそう口に出していた。 
心臓がドキドキする。

353: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:47
音がしない暗闇の中で、声は彼のものではなく、他の誰かが言ったように 
聞こえた。 
 
……………………… 
ぺたん。 
 
(アッ) 

今、何かが本当に聞こえたみたいな。 
自分の声などではない、何か別の。 
---空耳だろうか。 
 
ぺたん。 
 
違う。本当に聞こえる。 
廊下の向こう、階段をのぼりきったあたりから。 
 
ぺたん。 
 
「--------------!」 

根岸さんは、その場に凍りついた。 
廊下の方に背を向けた姿勢のまま、もう動けない。 
たとえなどではなく、彼の全身の毛が、ブワッと総毛立っていた。 
 
ぺたん。 
 
あれは---足音ではないのか? 
素足が板敷きを踏む音。

354: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:48
根岸さんが通って、埃がのぞかれたその足跡をなぞるようにして。 
とてもゆっくりとだが、誰かが確実に廊下を歩いて、こちらに近づいてくる。 
玄関には時代遅れで、自分すら外すのにてこずるような、しっかりとした 
錠がおろされている。 
二階に誰もいないことは、たった今、確認したばかりだ。そうなんだ。 
それなのに---。 
異様な、足音だった。 
妙にズレた間隔。 
忘れた頃に踏み出される、次の一歩。 
いったいどうやったら、あんな歩き方ができるものか。 
いったいどんなものが、あんな歩き方をしているというのか。 
 
ぺたん。 
 
それは、もうすぐ廊下の曲がり角にやってくる。 
そうすれば姿が見える。 
根岸さんが、ほんの少し首を後ろに向けさえすれば。 
だが、彼はそんなことはまっぴらだった。 
死んだ方がマシとさえ思うほど、あるまがまがしい確信が、爆発的に彼の 
中で膨らんでいたのだ。 

(もしも、あれを見たら……見てしまったら。どうかなってしまう。 
絶対にどうかなってしまう。俺は、どうかなってしまって、きっと、必ず) 
 
激しく震える手の動きにしたがって、前方を照らしたままの懐中電灯の光が 
本棚のガラスに反射する。

355: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/01/23 02:48
光を与えられてたガラスは、鏡の役割をはたして、根岸さんの背後にあるものを 
一瞬、映し出した。 
白っぽい--いや、ドロリとした灰色に近い、垂れて崩れたような形のもの。 
それが、廊下の暗がりの角にちらり、と見えた。 
 
……………ぺたん! 
 
根岸さんは、何事かわめいていた。 
ギャっと叫んだのかも知れなかった。 
体の自由は戻っていた。 
そして彼は走り出した。 
どこへ?廊下とは正反対の、手近の窓の一つにである。 
そこから外へ逃れるために---。 
……窓は開いた。雨戸もだ。 
外はもう、闇がおりかけている。 
降りるとすれば飛び降りるしかないのだが、危険極まりない。 
庭石があったら?いやコンクリートですら、ただですむかどうか。 
けれども根岸さんの精神状態は、危険などにかまっている余裕はまったく 
なかった。 
彼は、サッシの上にあがると、できるだけ足を下にのばして先をさぐり、そうして 
手を放した。

356: 終り 03/01/23 02:49
………ドサッ。 
運良く土の上に落ちることができ、一方の足をひねった程度ですんだ。 
根岸さんは、足にかまう前に、背後を仰ぎ見た。 
スーーーッと音もなく、雨戸が閉まるところであった…………。 

その後の根岸さんの行動は、すでに御存知のとおりだ。 
友人の下宿に転がりこんだ。 
そして彼は、おじに国際電話をかけた。 
激怒するかと思ったおじは、意外にもため息をついただけであった。 
根岸さんが東京に帰った後、これも意外なことであったが、当初の予定 
通りの謝礼金がおじから送られてきた。 
国際電話の折、根岸さんは一連の妖異のことを、やや感情的に--いや、ありていに 
言ってわれを忘れるくらい感情的になって、おじに訴えた。 
あれは何であったのか?もし心当たりがあるのなら、ぜひ教えてくれ---と。 
だがおじは、そのことにはいっさい口を閉ざすのだった。 
説明、弁解、謝罪、釈明、そのいずれもおじの口からは出なかった。 
ため息をついたときに、「一階にさえ、いてくれればな……」と、つぶやいた 
だけであった。 

根岸さんは、今日も夢を実現するべくフリーター生活を送り、彼のおじも 
京都の自宅でそれまで同様、一人で暮し続けている。 
たった一つ確実に言えることは、そんな両者にこの先、接点は二度とないという 
ことだけだ。 
 
元スレ:洒落にならないくらい恐い話を集めてみない?Part24 http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1042434704/
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